
質実剛健 (4/4)
復刻されたダックに秘められた驚きの能力に、職人も驚いた。 くどいようだが、こんな生地は今まで見たことも触ったこともなかった。 どういうことか具体的に挙げると、 穴があかない、ハリがあるのにしなやか、コシが抜けない…などだ。 このダック、帆布規格でいうところの2号帆布に相当する。 帆布はバッグで使うものは、11号、10号、8号、6号、4号、2号などがあり、数字が小さくなるほど生地は厚くなる。 2号を使うことは相当珍しい。 この2号帆布で何度かバッグを作ったことがあるのだが、布とは思えない厚さでカッチカッチという表現がピッタリの帆布だ。 分かりやすいところで、紙に例えよう。 11号帆布をコピー用紙に例えるなら、2号帆布は段ボールといったところだ。 バッグの製造では、商品を裏表で作ってから最後にひっくり返して出来上がり、というやり方があるのだが、2号帆布でこれをして拳の皮がズル剥けて流血し、商品を汚してしまったことがある。 …それくらい痛い。いや、硬い。 その2号帆布と同等品なのが、25oz numbers duck だ。 しかし比べると、

25ozの重み (3/4)
25oz numbers duckのその重さにはなんの意味があるのか。知れば惚れるその価値とは。 25oz numbers duckの25oz(オンス)というのは重さの単位で、生地においては1平方ヤードあたりの布の重さのこと。 デニム好きには馴染みがあるかと思うが、数字が小さいと軽く(薄く)、大きいほど重い(厚い)。 1ヤード=0.914メートルなので 1平方ヤード=0.914x0.914=0.835平方メートル。 1オンス=28.35グラムなので 25オンスの生地というのは、 28.35g x 25oz=708.75グラムということになる。 これって、とても分厚い。 ジーンズに例えたなら、その重さ(厚さ)を実感してもらえるだろうか。 デニムの王様 Levi’s501 で最も使われたのが、14オンス。 他のデニムブランドでもほぼ同じか、もう少し軽い12ozほどが広く使われている。 そのためか一般的に、およそ11~14オンスがオーソドックスな重さとされ、ミッドウェイトと呼ばれる。それよりも軽いスキニージーンズのようなものをライト

25oz numbers duckを選ぶ (2/4)
作り方が違うと、ここまで違う。 このダックが旧式力織機で織られていることには触れたが、この織機についてもう少し詳しく。 デメリットが最大のメリットを産むことがある。 力織機なるものは、それまで手織りの作業を機械”動力”式で可能にした機織り機だ。コツコツ作っていた布帛(※フハク)がほぼ自動で行われるようになり、世界中に広まった。 鶴の恩返しの鶴も、夜なべしてパッタンパッタンしなくていいようになったのだ。 ※布帛:植物由来の繊維を組んだものを布、絹由来のものを帛。生地全般のことを合わせて布帛という。 洗濯機が発明されて主婦の家事を劇的に楽にしたように、力織機もそれまで布帛を織っていた人々の大きな助けになったに違いない。 布帛の製造工程は、経糸(タテイト)と緯糸(ヨコイト)を交差させて作られるが、緯糸をシャトルと呼ばれる細長い舟型の部品に内蔵させて、経糸の間をくぐらせ、左右に往復させて織るのが旧式力織機の特徴だ。 手織りの工程と何も変わらない。 手作業をそのまま機械動力式にしたその構造上、織るスピードを上げることに限界があるため、現