#3
25oz numbers duck <1>
時代を越えた生地
2018AWコレクションから新たにKIGOのラインナップに加わる25oz numbers duck(25オンス ナンバーズダック)。このドラマチックな生地について、タイムマシーンに乗ったつもりで知っていただきたい。
KIGOのラインナップに素晴らしい素材が加わる。
見た目は帆布だが正確には25oz numbers duck という生地で、帆布ではなくダックと呼ぶのが正しい。見た目は帆布もダックも違いはないのだが、厳密には由来が違うそうだ。
ただ、その違いには諸説あって、その真偽を確かめる知識を持ち合わせていないので、ダックと呼ばせていただく。
このダック、何が素晴らしいかって織りが素晴らしい。
こんなに緊密でしっかりと織られた布地には、あったことがない。
聞けば、旧式力織機(キュウシキリキショッキ)で織られているという。(※旧式力織機の説明は後ほど。)
なるほど、それならしっかり織られているのも納得できる。
しかしこの生地、驚くほどドラマチックな経緯を辿って我々の手元に現れたものだった。
その経緯の話の前に、布ができるまでについて少々解説しておこう。
まず、布を必要とすれば糸を織る。
経糸(タテイト)と緯糸(ヨコイト)を交差させて作る。つまり機織り(ハタオリ)をするのだ。
鶴の恩返しの鶴がしていたようなことだ。
19世紀に力織機と呼ばれる機械が発明され、この発明によって飛躍的に織物の製造を安定させ、大量生産を可能にした。
産業革命の頃の話だ。
機織り機は時代の流れと共にさらに工夫され、より早くより効率よく織ることが出来る機械が作られて現在に至る。
産業革命の一役を担った織機といえども、現在のものに比べ、生産速度や効率などは劣り、今となっては昔のもの。現存して稼働しているものは、どれだけあるのだろう。
驚いたことに、この25oz numbers duckを織っている旧式力織機は、およそ60年ほど前に日本で製造されたものだそうだ。
それが新品だという!?
遠い南アジアの廃業した機織り工場の片隅で、木箱に入れられたままの状態で6台が見つかったのだ。
どうやら工場主は、信頼ある日本製の旧式力織機を数十台仕入れて布地の製造をスタートさせ、稼働中に起こり得る故障や部品の劣化に備え、部品取り用に仕入れていたものらしい。
遠い日本から都度、部品を送ってもらっていたのでは効率が悪いからだ。
しかし、この6台が手付かずで残されていたということは、いかに日本の機械が丈夫に作られていたかということの証ではないか。
この旧式力織機を設計し、作った当時の職人たちに、敬意を払わずにはいられない。
60年前に
海外へ旅だった織り機が、日本で再び稼働を始め
今
織られたダックが我々の手元に届き
これから
KIGOはこのダックでバッグを作る。
「俺らはこんな生地を作れる機械を作った。60年も未来のお前らには何ができる?」
当時の職人に試されているかのようだ。
さあ、彼らに負けていられない。
KIGOの新シリーズのスタートだ。
<次ページへつづく>