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25oz numbers duck <2>
作り方が違うと、ここまで違う。
2018AWコレクションから新たにKIGOのラインナップに加わる25oz numbers duck(25オンス ナンバーズダック)。この生地は旧式力織機で織られるがそのメリットとは。
KIGOのラインナップに25oz numbers duckが加わる。
この生地がおよそ60年前に日本で製造された新品の旧式力織機で織られていることには前項で触れたが、この織機についてもう少し詳しく。
力織機なるものは、それまで手織りの作業を機械”動力”式で可能にした機織り機だ。コツコツ作っていた布帛(※フハク)がほぼ自動で行われるようになり、世界中に広まった。
鶴の恩返しの鶴も夜なべして、パッタンパッタンし続けなくていいようになったのだ。
※布帛:植物由来の繊維を組んだものを布、絹由来のものを帛。生地全般のことを合わせて布帛という。
洗濯機が発明されて主婦の家事を劇的に楽にしたように、力織機もそれまで布帛を織っていた人々の大きな助けになったに違いない。
布帛の製造工程は、経糸(タテイト)と緯糸(ヨコイト)を交差させて作られるが、緯糸をシャトルと呼ばれる細長い舟型の部品に内蔵させて、経糸の間をくぐらせ、左右に往復させて織るのが旧式力織機の特徴だ。
手織りの工程と何も変わらない。
手作業をそのまま機械動力式にしたその構造上、織るスピードを上げることに限界があるため、現在ではシャトルを使わない革新織機(カクシンショッキ)が主流だ。
革新織機が登場したので、シャトルを使う昔の力織機を旧式力織機と呼んで区別している。
ではなぜ、25oz numbers duckは革新織機を使わず、旧式力織機を使うのか?
メリットはあるのか?
もちろんある。
革新織機は、緯糸を通すのにシャトルを使わない。
織るスピードを早めるため、緯糸を空気圧や水圧で左右に通す。そのため太い糸を織ることに向かない。さらに経糸をピンと強く張る必要があり、織り上がりがツルッと平滑に仕上がる。
一方で旧式力織機は、シャトルを使って緯糸を通すため太い糸で織ることもできるメリットがある。そして必要以上に経糸を強く張る必要がないため、糸本来の特徴を存分に引き出せる。
太い糸を使いその糸本来の質感をいかした厚い丈夫な生地を欲すれば、旧式力織機に勝るものはない。
ただ何と言っても革新織機に比べ、織るスピードが極端に遅い。
革新織機のおよそ1/4~1/6だ。
遅すぎる。
もちろんこれは生地の単価にダイレクトにはね返ってくるが、それでもいいと言わせる価値がある。
ちなみにデニムファンから根強い人気を持つアカミミデニムも、旧式力織機による産物だ。旧式力織機でしか、あのデニム良さは得られない。
目の肥えたデニムブランドが、やはり旧式力織機で織られた生地を好むのは当然だろう。
<次ページへつづく>