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質実剛健 (4/4)

最終更新: 2019年1月17日

復刻されたダックに秘められた驚きの能力に、職人も驚いた。



くどいようだが、こんな生地は今まで見たことも触ったこともなかった。


どういうことか具体的に挙げると、

穴があかない、ハリがあるのにしなやか、コシが抜けない…などだ。


このダック、帆布規格でいうところの2号帆布に相当する。

帆布はバッグで使うものは、11号、10号、8号、6号、4号、2号などがあり、数字が小さくなるほど生地は厚くなる。


2号を使うことは相当珍しい。

この2号帆布で何度かバッグを作ったことがあるのだが、布とは思えない厚さでカッチカッチという表現がピッタリの帆布だ。


分かりやすいところで、紙に例えよう。

11号帆布をコピー用紙に例えるなら、2号帆布は段ボールといったところだ。

バッグの製造では、商品を裏表で作ってから最後にひっくり返して出来上がり、というやり方があるのだが、2号帆布でこれをして拳の皮がズル剥けて流血し、商品を汚してしまったことがある。

…それくらい痛い。いや、硬い。


その2号帆布と同等品なのが、25oz numbers duck だ。

しかし比べると、明らかに2号帆布の方が分厚く感じるし、硬さも糸の太さも2号帆布がゴツい。

ではなぜ、

25oz numbers duck ≒ 2号帆布

と言われるのか。

理由は簡単だ。


前の項で触れたが、25ozという単位は面積当たりの重さ。一方、帆布の号数は織っている糸の太さで決まる。


まずそもそもの基準が違うのだ。

oz基準だと

25oz numbers duck ≒ 2号帆布

号数基準だと

 4号帆布 ≒ 25oz numbers duck

となる。


つまり、4号帆布を織っているほどの太さの糸でギッチギチに詰めて編んでいるのが25oz numbers duckというわけだ。


たったこれだけのことで、見たことも触ったこともないコシと不思議なしなやかさを兼ね備えた生地が生まれる。


実はこの生地、1930年代のアメリカ連邦規格に則って再現した生地だ。

糸は何本撚りで経糸が何本だとか糸の太さとか、さらには反物の端から何インチのところにブルーのラインを入れなさいとか…の規格に則って復元している。

ヴィンテージ好きにはこのブルーラインがたまらない。赤耳よりもっとそそられるディテイルだ。


氷を運ぶことなどに使われた、LL.BeanのBoat and Toteでも見られるあれだ。

水を入れて運べたなんて逸話も残っているそうだが、事実だろう。

これだけ密に織られていれば、それも可能だろう。一度試してみる価値はある。

そしてこの生地、穴があかない!

我々バッグメーカーは、リベットやカシメと言われる金属製の留め具を打ち付けるとき、ポンチで小さな穴をあけてから通す。

ただ相手が革ではなく帆布など布の場合は、糸を切ってしまうので目打ちを差し込んで織り目を押し広げる方法でカシメの通り穴を作る。(これをしていないブランドの多いこと多いこと…故障の元だ)

当然、25oz numbers duck でも目打ちを使う方法をとるのだが、驚いたことにこの生地の場合、すぐにその穴が塞がってしまうのだ。

こんな経験は初めてだった。作業するのにとても不便だが、ハッと目が覚めて感動すら覚えた。


これだけ緊密に織れば、それは丈夫だろうし風も水も通すまい。おそらく新品時のコシやハリ、強度をずっと持続させ続けることだろう。

何十年も使ったことはないが、疑いの余地はない。

昔の職人が、自分の仕事を全うせんと作った織り機と知恵がこの布地の存在を可能にした。

彼らに平手打ちを食らわされたかのような感覚だ。

先人たちにバカにされないよう、叱られないよう、今度は我々KIGOが仕事をする番だ。

​彼らに、お前らもなかなかやるな、と言ってもらえるといいのだが。

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